[旅館外] 巴マミ(31歳) :
[旅館外] 巴マミ(31歳) :
[旅館外] 巴マミ(31歳) : かつ、かつ、規則正しい靴の音が冷たい青空に霞んでいく
[旅館外] 巴マミ(31歳) : 季節は冬、年代わって既に一週越した一月のある日
[旅館外] 巴マミ(31歳) : 新年会等、少し騒々しいイベントを断りわざわざ一人予約した旅館に足を運ぶ
[旅館外]
巴マミ(31歳) :
「…ふう、まだまだ冷えるわね」
白い息を眺めて呟く、いまだ雪の話題も上がるほどの寒い日だ
[旅館外]
巴マミ(31歳) :
「まぁ、だから旅館にしたのだけど…」
誰に聞かせるでもなく、ゆっくりと歩き
[旅館外]
巴マミ(31歳) :
「はぁ…んん~~…」
軽く伸びをして、電車で固まった体を延ばす
[旅館外] 巴マミ(31歳) : 既に三十路と呼べる身はどうにも疲れやすい
[旅館外] 巴マミ(31歳) : それも癒したいものね、なんて流石に口にできない事を想いつつ
[旅館外] 巴マミ(31歳) : 温かい光の漏れる、旅館を前に
[旅館外] 巴マミ(31歳) : 「…ま、せっかくの休みだし」
[旅館外] 巴マミ(31歳) : 「ゆっくりしましょうか」
[旅館外] 巴マミ(31歳) : そのまま、予約を入れた旅館に足を踏み入れるのだった
[旅館外] 巴マミ(31歳) :
[旅館外] 巴マミ(31歳) :
[旅館外]
八重垣えりか :
「まいったな……」
今日日バリアフリーもない旅館とはね……見た目はなかなか期待できそうなんだがどうしたものかと玄関で立ち往生…もとい車いす往生している
[旅館外]
明智小衣 :
「ふんふふ~ん♪ どいつもこいつも忙しい中、小衣だけ一抜けしてやったもんね~♪」
ルンルンとステップ踏みながら。まぁでも一応自分は警察なわけだしと、旅館の見回りをしていた。勝手とは言わせないわ!
[旅館外]
明智小衣 :
「ん……? あら? 何、どうしたの、そこの、そこのアンタよアンタ」
玄関で立ち往生している車椅子の女性が、チラと目に入って。思わず足を止める。
[旅館外]
八重垣えりか :
「ようちょっと困ってることが…あんたじゃ無理だな」
振り返りざまにがっかりとした顔を見せる
[旅館外]
明智小衣 :
「あ……? あぁ~ん? 今なんて言ったぁ~?」
わたしが近づくと、その女性が何者かを瞬時に思い出し思わず飛び退きかけた。
[旅館外]
明智小衣 :
「ちょっ、え、えりかぁ!? よ、よりにもよってこんなところで……」
「って、アンタ……今この小衣の事、バカにしたでしょ~!? 何が無理よ! どうせ玄関で立ち往生してたんでしょ!」
[旅館外]
明智小衣 :
そのままがしっと車椅子を押し上げどうにかこうにか……
口ではいろいろ言いつつ、やっとの思いで玄関を突破させてやった。
[旅館外] 明智小衣 : 「はぁー……はぁー……あぁあ~~……疲れた」
[旅館外]
八重垣えりか :
「まあ上げてくれたことには感謝するが……おい、下の名前で呼ぶな。気安いぞ」
不機嫌な瞳を向けて
[旅館外]
明智小衣 :
「はぁ~? いいじゃないの? ……まぁいいわ、やーえーがーき! これでいい?」
「……で、このままどこ行くの? まだ車椅子の身じゃ辛い所ばっかだと思うけどー?」
[旅館外]
八重垣えりか :
「結構結構、親しき中にも礼儀ありだからな」
「別に、ただ荷物を置きに来ただけさ。言われた通りいくのがつらいところばかりだしな」
[旅館外]
明智小衣 :
「ふぅ~ん……まあ休暇を取ること自体が今日の目的だったわけだし」
「だから旅館に泊まる以外に別に……予定もないから、付き合ってやってもいいけど?」
[旅館外] 明智小衣 : 「そしてこの小衣様にばったり出会えたこと感謝しなさい!」
[旅館外]
八重垣えりか :
「おいおい聞こえてなかったのか?それとも意味が取れなかったのか?」
「お前たちが楽しむために私というデカい荷物を一足先に置きに来たんだよ」
ま足は動かないがねと皮肉気に笑う
[旅館外] 明智小衣 : 「…………」
[旅館外] 明智小衣 : 「何よ」
[旅館外] 明智小衣 : 「それ冗談のつもりなら笑えないけど?」
[旅館外] 明智小衣 : がしっと、車椅子を強引に押す。
[旅館外] 明智小衣 : 「アンタも楽しみなさいよ」
[旅館外]
八重垣えりか :
「おいおい……人の話をだな……」
文句を言いつつも抵抗はできず押されていく
[旅館外] 明智小衣 : 「ふふんっ、口を叩くのはアンタだけの十八番じゃないのよぉ~、この小衣がこの世のだれよりも口を叩くのが一番なんだからぁ覚悟しときなさいよ!」
[旅館外] 明智小衣 : …………あれ、これって自分を褒めてる事になるっけ? まぁいいわ。
[旅館外]
八重垣えりか :
…義理が廃ればこの世は闇夜か
まあ悪い気分じゃない
[旅館外] 明智小衣 : 「っていうか! どうするこれから? アンタさっきまであんなに口叩けたんだし、この小衣が車椅子押してやってるんだから、理想のスケジュールぐらいはあるわよね!」
[旅館外]
八重垣えりか :
「……ねえよ。さっき言った通り部屋でずっと読書でもしようと思ってたんだ」
拗ね気味に顔をそむける
[旅館外]
明智小衣 :
「はぁ~~~~」
肺を傾ける勢いでため息を吐くと、にぃっと笑みを浮かべながら八重垣の顔を覗き込んでやる。
[旅館外] 明智小衣 : 「そんなのがアンタのスケジュールなのぉ? まあ読書が好きなのはいいことだけど」
[旅館外] 明智小衣 : 「けれど旅館といえば温泉じゃないの? あと……おいしい料理とか」
[旅館外] 明智小衣 : 「あとは、あとは、えーっと……」
[旅館外]
八重垣えりか :
「……それ全部するためには介助がいるのはもちろんわかってて言ってるよな?」
自嘲するような言葉を吐く
[旅館外] 明智小衣 : 「………あぁ~~~もう! 八重垣! 残念だけどアンタの平穏なお休みは終わりよ!」
[旅館外] 明智小衣 : 「その介助とやらも引き受けてやろうじゃあないの! この明智小衣が!」
[旅館外] 明智小衣 : 「今日はアンタとこの小衣と、あとほかの奴らも時折巻き込みつつ、とことんやってやろうじゃないのよぉ~!」
[旅館外]
八重垣えりか :
「お前のその小さい体じゃ途中でへばるだろ。するにしても途中で交代なりしてもらったほうがいいぞ?」
ネコのような意地の悪い笑顔で頭のてっぺんからつま先までを眺める
[旅館外] 明智小衣 : 「へばるぅ~? 警察よ、わたし? デスクワーク(座り仕事)も警備(立ち仕事)も事件発生からの出動も、重なりまくって重労働なんだから!」
[旅館外] 明智小衣 : 「それぐらい慣れっこよ! おらおらぁ~」
[旅館外]
八重垣えりか :
「わかったわかった。明智警視にお任せしますよ」
「……おいおいもっと丁寧に押してくれ、私は繊細なんだ」
[旅館外]
明智小衣 :
「あーはいはい、わかりましたよー」
おちょくるのはやめて、普通に車椅子を押してあげる。かつかつと、ゆったりと。
[旅館外] 明智小衣 : 「…………困ったら、遠慮なく助けを呼びなさいよね? アンタはそれやっていい身分なんだから」
[旅館外]
八重垣えりか :
「もちろん利用させてもらうさ。義理が廃ればこの世は闇夜だからな」
「実際今も段差がないから自分で手押しできないことはないからな」
[旅館外] 明智小衣 : 「ふふふっ、この小衣が命綱ってわけねぇ? 心臓バクバクさせながら押されてなさい!」
[旅館外]
明智小衣 :
それにしても人嫌い……かは定かじゃないけど
何よ、普通にわたしと接すことができるじゃないの……
[旅館外] 明智小衣 : まさか、わたしは「人」扱いされてない……? あはははっ、そんなバカな!
[旅館外]
八重垣えりか :
「なんだ急に一人で百面相を始めて」
振り返ってその顔をしげしげと眺める
[旅館外]
明智小衣 :
「……読書好きって偏見だけど人間観察がだぁいすきなのって多いわよねぇ?」
そう言いつつも、この旅館には似つかわしくない自販機の横を通り過ぎようとする。
[旅館外]
明智小衣 :
「あっ、なんかいる?」
自販機の方に顎をくいっと
[旅館外] 八重垣えりか : 「シモの介助を途中でしてくれる気があるんなら遠慮なく買おうか?」
[旅館外]
明智小衣 :
「…………別に、私なんて血も見たことあるんだからぁ~」
まぁこんな事で怖がらないのはわかってて、自分でもバカらしい事を言いながら
外装こそ今風だけど、内容はこの旅館にぴったりなフルーツ牛乳とコーヒー牛乳を購入する。
[旅館外]
明智小衣 :
「だからシモぐらい、ねぇ? 警察なんだし、丸ごと腐ってるのだって見たことあるわ!」
ないけど。
[旅館外]
八重垣えりか :
「冗談だよ。最近は多目的トイレって便利なもんがあるんだぜ?」
引っかかったなとにやりとする
[旅館外]
明智小衣 :
「多目的トイレ? 多目…………」
ふとちょっと前の時事的な話題が脳裏を過ぎって。
[旅館外]
明智小衣 :
「ちょ、ちょちょちょちょ……って、あ、違う、違う! 多目的トイレ、うん、いいわよね、いろいろ配慮もできて」
[旅館外]
八重垣えりか :
「くくっ……まあそういうことでいくら飲んでもOKだ」
「親切な警察官殿に賄賂でもおごっておこうかな?」
[旅館外] 明智小衣 : 「……っ~~! 何よ~! 警察官殿って言いながら、やっぱ小衣の事を下に見てるでしょ~! いくらアンタが年上だからってこっちはハーバード大飛び級なのよぉ!」
[旅館外] 明智小衣 : そう、胸を張って言う。なんせ事実だもの!
[旅館外]
八重垣えりか :
「打てばいい反応が返って来るもんだからな」
「どうにも構っちまいたくなるのさ、孫顔ってやつか」
[旅館外] 明智小衣 : 「………小衣を孫扱いしてるってわけぇ~!? このこのこのぉ~!」
[旅館外] 明智小衣 : 車椅子をがたがたやるのは、あれだから、八重垣の頭を遠慮なくわしゃわしゃと。
[旅館外]
八重垣えりか :
「あっ!おいやめろ!」
自由になる手でそれに反抗しようとして更にくせっけがぐしゃぐしゃになる
[旅館外]
明智小衣 :
「やってやったわ! あははははっ!」
よし一本取った! 何を一本取ったかわからないけど、こいつのペースを崩せただけで腹の底から笑いがこみあげてくるわ!
[旅館外]
明智小衣 :
なんかバカにしてるはずなのに。
もっと違う何かが。
[旅館外] 明智小衣 : 「……ふぅっ」
[旅館外] 明智小衣 : 「……チェックインは済ませてるのアンタ?」
[旅館外]
八重垣えりか :
「おーい……人の髪こんなにして何一人で賢者モードになってんだ」
「いやまだだ。誰かが強引に外に連れ出したからな」
[旅館外]
明智小衣 :
「……悪かったわね。こっちはもうとっくにチェックインしてるから、フロントに行くわよ……」
ん、旅館の場合はフロントって言い方はなんか雰囲気ぶち壊しの気がするし違う気もするけど、まぁいいわ!
[旅館外]
八重垣えりか :
「はいはい了解ですよ警部殿」
自然と1段階階級を下げる
[旅館外]
明智小衣 :
「……」
見逃してやるわ。いちいち乗っかってまたペースを持ってかれたら……って我慢できるかぁ!
「じゃっ、チェックインしたらお風呂行ってからの上がって牛乳一気するわよ!!! 王道でしょ!」
[旅館外]
八重垣えりか :
「元気だねえ。まあそういうこざっぱりしたところは嫌いじゃないが」
「もちろん介助はお願いできるよな警部補殿?」
更に一段階下げた
[旅館外]
明智小衣 :
「してやるわよ……ってコラァアア~~~!!!」
また髪をわっしゃわしゃに乱し、フロントへと向かう。
[旅館外]
八重垣えりか :
「気に入られちまったのかねえ……私のくせっけ」
抵抗をあきらめつつ前髪の先をいじりながら押されていく
[旅館外] 明智小衣 :
[旅館外] 明智小衣 :
[旅館外] 明智小衣 : 「……さぁてフロントの方も済ませたし、行くわよあんたが泊まる部屋」
[旅館外]
八重垣えりか :
「OK。ようやくこのお荷物が収まる場所に収まるわけだ」
パンパンと膝を叩く
[旅館外] 明智小衣 : 「あ~はっはっはっ! 風呂に浸らせてやるに決まってるでしょうがぁ! まっその前に旅館そのものに入り浸らなきゃ、ね?」
[旅館外] 明智小衣 : よし! 上手いこと言ったわ! ひ~ひっひっひっ
[旅館外] 八重垣えりか : 「……う~ん。巡査部長に降格だなこりゃ」
[旅館外]
明智小衣 :
「……やぁ~えぇ~がぁ~きぃ~~~!!!」
肩を揉む
「と、もう髪を弄るのは効かないみたいだから、もう怒っても無駄よねぇ~」
[旅館外] 明智小衣 : ふぅ~大人の対応っ大人の対応っ。
[旅館外]
八重垣えりか :
「んっ……お、おいっ!セクハラは今日日厳しいんだぜ?二階級特進しとくか?」
肩を揉まれた感触で自分から出た声に頬を赤らめつつ
[旅館外]
明智小衣 :
「……社会的に死んだら二階級特進どころか警察追放なんだけど」
同性だからってセクハラはセクハラなのはわかってるしぃ~、と言わんばかりに私は口笛を吹く。
「んじゃ、行くわよあんたの部屋、えーっと『2××』っと……ふぅ~んなんだ小衣の部屋の近くじゃない。ちょうどいいわ」
[旅館外]
八重垣えりか :
「おいおい。いよいよ本当に身の危険を感じてきたぜ。」
「ま、ここは巡査の良心に期待しておくか」
[旅館外]
明智小衣 :
「何よ! 部屋に入ったからって襲い掛かったらそれは強姦よ強姦!」
「ちゃあんとしたお付き合いをして、同意の上で……」
[旅館外] 明智小衣 : 「……」
[旅館外] 明智小衣 : 「何言わせてんの馬鹿! ぁああ~~! おらおらおら~!」
[旅館外]
八重垣えりか :
「んんっ…!勝手に自爆して八つ当たりするんじゃねえよ…」
車いすを押してきた筋肉がほぐれて心地いいようなくすぐったいような感覚を強く味わう
[旅館外] 明智小衣 : そうして小衣は、八重垣を押してやりながら部屋へと向かった……。
[旅館外] 明智小衣 : (お部屋2へ)
[旅館外] 明智小衣 :
[旅館外] 明智小衣 :